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YOICHI ERIKAWA
襟川 陽一

コーエーテクモホールディングス
代表取締役社長

今までにない面白さで
世界のゲームファンに応える

「創造と貢献」に込めた思い

「創造と貢献」は、当社でコーエーテクモの精神と呼んでいる基本理念です。私が1981年に初めて作ったゲームタイトルが『川中島の合戦』で、非常にお客様に好評を博しました。武田信玄と上杉謙信が戦った歴史的事実を踏まえたシミュレーションゲームで、アクションゲームが主流だった当時、それまでにない考えて楽しむタイプのものでした。その新しい面白さが、お客様の絶大な支持をいただいた。そこが最初のスタートになり、「第二作目を早く作ってください」「もっと歴史のゲームを作ってください」といった要望に応えるために、継続してゲームを作れるゲームソフトの会社になろうということになりました。このようにお客様からの大きな声援や応援をいただいてゲームソフト会社を始めた経緯や、社会に役に立つという仕事に初めて出会えたという気持ちが、「創造と貢献」という言葉になっています。

私がこうした理念をかかげる理由は、学生時代に活動していたジャズバンドでの経験によります。突出した力量の演奏者がいるだけでは、バンドとしてはバラバラのままです。お客様はバンドの全体的なサウンドを聴かれるので、メンバーが共通の考え方でサウンド作りをすることが、お客様の評価につながるのです。ゲームもチームで開発します。皆が同じ気持ちで作っていくことによってチームとして最高のパフォーマンスが出て、個人では成し遂げられないことが可能になる。その実現には理念を共有していくことが大切だと、体験から強く思っています。

今は世界に向けてゲームを発信しています。『仁王』は現在約280万本の出荷本数になっていますが、そのうちの90%は海外の方々が買って楽しんでくださっています。世界のファンから「よく頑張った」「次のタイトルを期待しています」という声をいただきました。アメリカの著名ゲーム評価サイトでも88点という高い評価を得るなど、新しい面白さを欧米のゲームファンの方々が感じてくださり、次のタイトルも期待されているという実感は非常にうれしい。この気持ちは『川中島の合戦』の頃と変わらないですね。コーエーテクモの存在意義は、ゲームファンの方々からの期待に応えることですから、こんな幸せはありません。

▲『仁王2』

経営統合以来、継続して増益を達成

コーエーとテクモが経営統合してから9期連続して増益を達成しています。これは単独の会社では成し得ないようなゲームが実現できるようになったことが非常に大きい。両社の持つ技術やノウハウ、経験、人材などが一緒のチームになって影響しあうことで、1+1が3になるという、シナジー効果が生まれました。例えば『仁王』は、テクモのアクションゲームのノウハウと、コーエーの歴史ゲームのノウハウが融合することで実現できたのです。そしてこのシナジー効果などで生み出したIPに、「IPの創造と展開」という経営方針のもと、ジャンル、コラボ、グローバル、プラットフォーム、タイアップと、5つの分野に展開することで、成長性と収益性を実現し総合的な発展を達成しました。

クリエイターであり、経営者である“シブサワ・コウ”

私は経営者ですが、同時にゲームクリエイターのシブサワ・コウとしてゲームを作ってきました。プロデューサー名を名乗ろうと考えたとき、一番尊敬していた経済人である渋沢栄一から名字をもらい、当時の社名の光栄からコウをとって、シブサワ・コウとしました。渋沢栄一は、新紙幣の一万円札の図柄になる方です。幕末から明治の時代を中心に活躍し、多くの日本の大手企業が渋沢栄一と何らかの関係があってできているような、日本の産業界を作り上げた経済人です。ベンチャーマインドを持っていて誰も成し遂げなかったことに取り組んで1つ1つ実績を上げています。また『論語と算盤』という著書を出していますが、経済人は倫理観を持って仕事をしないといけないと言っている。渋沢栄一は財閥を作れる立場にありましたが作らず、一般の投資家の方々に株式を全部分配していった。社会に役に立つ仕事をしていくことが人間の生きる道だとも言っています。本当に公の気持ちが強い経済人でした。明治時代を代表する経済人はたくさんいますが、そういう方々から一番尊敬されていた。私も渋沢栄一の精神を、ゲームの分野で実践していくという思いでやってきました。

学術研究を支援

最近は大学で講演が増えました。今年度だけで早稲田大学、慶應義塾大学、東京大学に行っています。理工系の学生さんの興味に沿ったテーマを設定して、セミナーをしています。壇上では、「優秀な学生さん、ぜひともコーエーテクモに来てください」という思いでやっています(笑)。デジタルエンタテインメントの世界に関心を持って、優秀な人たちが来てくれれば、業界としてもより活力が生まれて新しい展開も出てくるのではないかと思います。

▲『慶應義塾大学 大学部創設125周年記念 商学部講演会』/『東京大学 工学部 講演会』
『早稲田大学 講演会』/『電気通信大学への寄附感謝状受領』

また、学術研究でのゲームの活用を支援するために、1994年、公益財団法人科学技術融合振興財団(FOST)を設立し、今年度で25周年を迎えました。私は当初から理事長を務めています。ゲームで得た資産を、ゲームを活用した教育や研究活動に使っていただきたいという思いで、これまで4億円を超える金額を支援活動や研究助成に提供してきました。

▲第11回 FOST賞受賞式

私たちは世界をめざす

私たちは「世界No.1のエンタテインメント・コンテンツ・プロバイダー」になることをビジョンとして、世界のゲームファンの方々から支持される会社になっていきたいと考えています。これから海外で求められるゲームには、3つの傾向があると考えています。まずAIの駆使。コーエーテクモでも、HEROZというAIの会社と業務提携を行って、『三国志ヒーローズ』というAIを使った新しいタイプのゲームを開発中です。次に、大人数で、みんなと一緒にプレイを楽しむマルチプレイというスタイル。3つめは見て楽しむというゲーム。eスポーツやプレイ動画など、自分はプレイせずに超絶技巧を見るという楽しみ方が出てきていますので、見て楽しいゲームを作ることに取り組んでいます。これらの取り組みをもとに、グローバルIPの創造と展開を実践して強力に推し進めていきます。

また、コーエーテクモゲームスの新本社ビルが2020年1月に横浜・みなとみらいに竣工して、新しいオフィスから世界に向けて発信できる体制が充実します。新本社ビルには音楽ホールも併設されますが、イベントや音楽のライブだけではなく、eスポーツ大会の開催も考えています。エンタテインメント活動を世界に向けて発信する場にしたいと思っています。

コーエーテクモホールディングス
代表取締役社長

襟川 陽一

えりかわ・よういち/栃木県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、株式会社光栄を設立。元々染料商を営んでいたが、パソコン購入を機に、自力でソフトウェアの開発やゲーム開発を始める。本業の傍ら制作した『川中島の合戦』がヒットしたことで本格的にゲーム制作ビジネスを始動させ、シブサワ・コウとして名作「信長の野望」や「三國志」などのIPを生み出した。2009年4月にゲーム制作会社のテクモと経営統合し、コーエーテクモホールディングスを設立。全世界で約280万本を出荷したダーク戦国アクションRPG『仁王』では、ゼネラル・プロデューサーを務めた。