TOP INTERVIEWトップ インタビュー

KEIKO ERIKAWA
襟川 恵子

コーエーテクモホールディングス
代表取締役会長

経営者の立場から
社員にも貢献

コロナ禍を越えて

2020年は春先から新型コロナウイルス感染症の流行で世界中が大混乱に陥りましたが、ちょうどときを同じくしてコーエーテクモゲームスは新本社へ移転しています。ビルの設計から内外装のデザイン、オフィスの備品、草花のレイアウト等は私の仕事でした。世界でトップレベルのデザイナー・永井一正先生のご協力が大きな力となり、エンタテインメントの会社にふさわしく見たこともない、クリエイティブで快適なオフィスが完成しました。新本社ビルは、数年間は増員に耐えられる十分な空間を持っており、社員のお楽しみの場である熱帯魚が泳ぐカフェテリアは、味はもちろん並みのレストラン以上でステキなインテリアとディズニーの絵画に囲まれています。天井は高く4メートルです。また、各オフィスも高い天井で換気をよくしました。オフィス内にはアートや、多くの植物と椅子、テーブル、オブジェを配した憩いの場があり、メンタルヘルスケアによる快適性も考慮しています。私の社員への「創造と貢献」です。

▲新本社ビル

しかし残念なことに、皆様が楽しみにされていた新本社ビルのお披露目会はコロナ禍で中止となり、出社する社員を2割に抑えて在宅勤務中心となりました。ただ、先述したとおり、5、6年先を見越したゆとりを持った空間だったことから、今回は運よく、国の推奨するソーシャルディスタンスに対応できました。また、多くの企業がビデオ会議などのインフラ整備に苦慮するなかで、当社はまだ引越前だったため、建築工事の一環として最短でリモート環境を準備できました。当社の研究開発・技術支援部署であるフューチャーテックベース(FTB)も大活躍し、各人からの膨大な要求に応え、最速で環境の整備を行いました。残念ながら当初想定した形でのスタートは切れませんでしたが、災い転じて福と成す形となり、結果オーライです。

横浜は開港以来、グローバルビジネスの拠点であり、新本社は世界に通ずる海を望む格好の場所にあります。当社が得意とするスピード感を持って、新タイトルの立ち上げ等ができました。移動ができない状況下でも国内外トップレベルの専門分野の方々によるリモートでの研修や開発も進行中です。研修自体が商品開発に直結しているので、社員は皆エンジョイしながらやる気は十分です。

▲研修風景

社員一同、知識欲が旺盛で、お客様にお喜びいだたけるよう使命感に燃えて、新たな時代にチャレンジ中です。学びとチャレンジ、変革のループが上方のスパイラルを形成し、ドキドキワクワクのアドベンチャーゲームのようです。
本社ビルとKT Zepp Yokohamaが完成したら、次は70部屋の社員用マンションの建設が始まりました。オフィスを建築する際には、同時に社員寮や社宅を建設してきました。世間ではソフトウェア開発の資産は人材のみで、寮、社宅は必要ないとおっしゃる方もいます。しかし、女性経営者の母性というか、親のような立場としては入社したての子供の生活環境や、結婚後の住居が気がかりなのです。建設中のマンションが完成すれば、合わせて300室以上の社員寮・社宅を確保できます。社員が元気で明るく前向きに仕事ができる環境を常に構築するのが私の仕事のひとつです。

▲『コーエーテクモ社員寮』
  • ▲『保養所・リゾートハウス「伊東ビラ」』
  • ▲『京都社員寮』

みんなの笑顔を――福利厚生の取り組み

入社すぐから始まる奨学金の返済は新入社員の悩みの種ですので、5年間の繰延返済ができるよう会社が立て替える制度を備えています。また、育児休暇制度にも力を入れています。私は経験から「結婚して早いうちに子どもをもうけるとよい」とよくアドバイスしています。社員が子宝に恵まれて幸せそうな姿を見るのはうれしいものです。出産・育児で休暇を取得しても心配はいりません。仕事が心配で悩む人も多いのですが、社内外との調整や皆が協力し合うので女性の育児休暇の取得率は100%です。男性も育児休暇を取得するように指導し、高い取得率となっています。でも、せっかく育児休暇を取ったのに手伝えることがなくて、かえって足手まといと言われて会社に来る人もいて、困ったものです(笑)。

共存共栄――社会とともに

企業活動は個々の会社だけが栄えて、それで終わりではありません。企業や社員がお世話になっている地域社会への貢献や、ビジネスにおいても社会や業界全体のことを考え行動しなければなりません。私は業界の要望にお応えすべく、日本最大の会員数となったコンピュータソフトウェア協会(CSAJ)や、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)、コンピュータエンターテインメント協会(CESA)、デジタルメディア協会(AMD)等の社団法人の設立、その他公益法人に参加し社会貢献活動もしてきました。私が仕事を始めた当時、ゲーム業界は揺籃期で産業として法整備等、世界を視野に基盤を確立する必要があったのです。シブサワ・コウが基金を提供し設立された公益財団法人科学技術融合振興財団(FOST)では日本学術会議 会長で文化勲章を受勲された近藤次郎先生が、この財団の会長をお引き受けくださいました。シンポジウムに合わせて作成した永井一正先生のポスターは学者の先生方にもたいへんな人気で、記念にぜひ欲しいとのことで急ぎご用意しお渡ししたこともありました。

▲JASAGポスター/FOSTパンフレット

近藤先生は、東大教授で日本平和学会 会長である関寛治先生たちと学習効果の高いシミュレーションゲーミングを支援されており、ニューハンプシャーの学会で「信長の野望」をマネジメントゲーム教育に有効として取り上げてくださいました。最近、ツイッターで「信長の野望をプレイして、いかに治水工事が大事か!」と話題になりましたが、当時もハーバード大学大学院を始め、北米の大学が学生にプレイさせてテレビ等にも紹介され話題になりました。このFOSTも昨年25周年記念を迎え、1981年当時からゲーム『川中島の合戦』で初歩的なAIを取り入れていたこともあり、「ゲームとAI」のシンポジウムを開催いたしました。シンポジウムには、多くのゲームソフト会社の皆様も参加されています。 これらの社会活動は大きく花開き、各組織も拡大発展しました。志を同じにする人達と様々なチャレンジをし、充実していたと感じています。私は睡眠を削り、子育てや勉強、仕事に取り組んできましたが、若かったからできたことで、今では同じことをやろうとしても、とても頭も体もついてきてくれません(笑)。

▲『第24回AMDアワード受賞式』

また、災害等に対する支援金拠出は1989年のサンフランシスコ地震より継続して行っております。今年はコロナ禍に対する支援のため、医療従事者の方々にお使いいただくフェイスシールドや防護服など1億円相当の医療物資を、当社本社のある横浜市へ寄贈しています。事業所がある京都市とも相談の上、京都市が進める文化芸術芸能従事者への助成制度「京都市文化芸術活動緊急奨励金」へ金3,000万円を寄付するなど、地域貢献を積極的に進めています。

▲横浜市長との医療物資寄贈記者会見写真

情熱で世間を驚かす

コーエーテクモに入社してくださる皆様、インターンシップを実施していますが、企画・運営は外部の業者に任せることなく、当社を代表するディレクターや、メインプランナー、メインプログラマーから直接、話を聞くことができます。インターンシップに参加された96%の方が満足されたそうですので、機会があればぜひ参加してみてください。
どんな分野でも、真剣にその物事に取り組んで、難題があったら寝る間も惜しみ勉強し努力することで限界値が上がります。そのしきい値を何度も乗り越えることです。その結果、どんな難問も解く能力と自信が備わってきます。情熱と周囲を巻き込む熱気を持ってチャレンジし、世間をアッと言わせる仕事をしてください。太く長く、楽しい人生をともに過ごしましょう。

コーエーテクモホールディングス
代表取締役会長

襟川 恵子

えりかわ・けいこ/横浜市出身。多摩美術大学デザイン学部卒業後、夫・襟川陽一と光栄(現コーエーテクモゲームス)を設立。会社経営の傍ら、「アンジェリーク」などネオロマンスゲームシリーズの制作を指揮し、世界初の女性向けゲームのジャンルを開拓。長年にわたりゲームソフトの著作権保護と業界の国際的な発展のために活動し、7つの社団法人や公益法人の設立に従事した。「The Wall Street Journal Online」記事『日本を直せる10人の人々』の一人として選出。経済産業大臣表彰受賞、総務大臣表彰受賞、2015年に藍綬褒章受章。