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FUMIHIKO YASUDA
安田 文彦

コーエーテクモゲームス常務執行役員
Team NINJA ブランド長

安田 文彦

「言葉を必要としないもの」を目指して諦めずに成し遂げることへの
責任と楽しさ

環境の変化にともなう進化

 私がゲーム業界を目指したのは、大学で文学部だったこともあり、ゲームのストーリーを作りたいと思ったからです。それで、新卒採用でテクモに入社しました。RPGが作りたかったのですが、Team NINJAに配属になった日に「RPGは作らないから」といわれて残念だったのを覚えています。ただ、そこでアクションゲーム制作のノウハウを学んだことが自身の礎になり、後に『仁王』でTeam NINJA初のアクションRPGを作ることになった際に、その経験が生かされました。このように環境の変化に伴って、自分やチームが進化していくこともゲーム開発の面白さですし、昨今のコロナウィルスを取り巻く状況の変化に対しても、会社やチームが進化することが必要とされています。

幅広いキャリアパス

 私は現在『Wo Long: Fallen Dynasty』でプロデューサー、『Rise of the Ronin』では開発プロデューサーとディレクターを担当しています。プロジェクトの内容や布陣によって幅広い業務を担当できる事も多くのプロジェクトが動いているメリットです。アクションゲーム制作の場合、大きく4チームで制作していて、1つはレベルデザインで、ステージを設計したり敵を配置したりするパート。次がアクション。プレイヤーや敵キャラクターを動かして駆け引きを作ります。そしてRPGパートはシステムやパラメータを通して中長期的な面白さを実現します。最後は演出やストーリーで、CGやサウンド担当と協力して作っていきます。それらすべてのパートを経験するスタッフもいれば、特定パートのスペシャリストもいます。プランナーだけでなく、プログラマーからディレクターやプロデューサーになるスタッフも多くいて、積極性と完遂する意志さえあれば様々なキャリアパスが用意されています。

▲『Wo Long: Fallen Dynasty』

大切な3つのバランス

 コーエーテクモでは「品質・納期・コスト」について、耳にタコができるくらい言われますが、私はこれを「自分」を主語に置き換えて考えるようにしていて、「やりたいこと・やるべきこと・やれること」の3つが重要だと思っています。実はこれ、言葉自体は著名なゲームクリエイターの方の受け売りです。自分やチームの「やりたいこと」がないと物事は進みませんが、ただそれだけでもゲームは作れない。ですので「やるべきこと」を意識することによって、お客さまに期待されていることや、今後のためにチャレンジしなければいけないことを明確にしないといけません。そして、「やれること」というのは、チームやメンバーの特性・能力や、会社の技術力、予算から見えてくるものです。この3つのバランスが大切で、たとえば「やるべきこと」だけだと受身になってしまいますが、かといって「やりたいこと」だけだとお客さまが求めていないものになったりしてしまいます。実際、私自身も『NINJA GAIDEN3』で初めてディレクターを担当したときにそれらのバランスを取ることができず、シリーズファンの皆さんの期待に応えられなかったことをずっと後悔していました。でも、その反省が『仁王』シリーズのヒットにつながったと思います。

逃げずに何ができたのか

 これからも世界中のお客さまに楽しんでもらえるゲームを作り続けたいです。しかしTeam NINJA、コーエーテクモというブランドが本当に愛されるには、まだまだ力が足りないとも感じています。世の中にはもっと素晴らしいゲームがあるので、そこに追いつき負けないものを作るという意識が必要です。アクションゲームだと開発に3~5年はかかりますが、その間に諦めずに何に挑んできたか、逃げずに何ができたのか――それを意識できているかというと、まだまだだと思っています。これにはゲームを作ることの責任だったり、楽しさだったりという実感を積み上げながらやっていくことが大事だと考えています。私はTeam NINJAを世界で一番のアクションゲームを作るチームにしたいですし、コーエーテクモを世界一のアクションゲームチームを持つ、世界No.1のゲーム会社にしたいですね。

▲東京ゲームショウ2019『仁王2』試遊

ゲーム業界には正解がない

 Team NINJAでは、みんながプライド持ってゲームを作っています。お客さまに対して恥ずかしいものは出さないという姿勢で取り組んでいるので、すごく刺激的で、間違いなくゲーム制作が楽しいということも感じてもらえるブランドです。ただし、ゲーム業界には正解がありませんので、正直大変ですし、厳しいこともあります。いいアイディアが採用されないこともあれば、採用されてもお客さまに面白くないといわれることもある。それでも、常にゲームを作りながら成長して、さらにいいゲームを作りたい、終わらないサイクルを一生楽しみたい、という方には素晴らしいチームだし素晴らしい会社だと思います。ここに共感できそうな方にTeam NINJAにぜひ来てほしいですね。

コーエーテクモゲームス常務執行役員
Team NINJA ブランド長

安田 文彦

趣味は読書で、学生時代から膨大な読書量を誇る。「趣味は"読書"っていうと、みんな『ふーん』て笑うんですよ。適当に言っているだろう、みたいな。そういうリアクションは本当に悔しい(笑)」。ジェイムス・ジョイスの『若き芸術家の肖像』には、大きな影響を受けたという。「アイルランド文学が一番好きなんです。アイルランドの伝承を入れたくて『仁王』の主人公はアイルランド人という設定にしました」