人と仕事を知る

キャラクターに
生命を吹き込む仕事

永島 知美 TOMOMI NAGASHIMA
  • CGデザイナー

想像をビジュアルにする楽しさ

美大時代はアナログで絵を描いていました。小説が好きだったのでイラストレーターやブックデザイナーになりたいと思っていました。ポーやブラッドベリの幻想小説やSFの古典が好きで、その世界を絵にするのが楽しかったんですね。そのうちブックデザインにも興味が広がって、デザイン会社に就職しようと考えていました。その頃、ゲーム会社は頭になかったんです。コーエーテクモゲームスに応募したのは、絵の上手な友人たちにゲーム会社から内定が出たことがきっかけ。当時、ほとんどのゲーム会社は募集を終えていたのですが、コーエーテクモは秋採用も実施していたのです。縁があったんだと思いますね。

イメージが逆転した瞬間

入社前のイメージは、ゲーム会社の中でも歴史あるしっかりとした会社、というものでした。配属されたら趙雲など歴史上の武将を作るのかな、と漠然と思っていました。ところが入社して、配属になった職場に案内されたとき、ディスプレイに見覚えのあるモンスターが映っていて驚いたんです。あれ?これは他社のゲームだよね、って。

当時開発中の『ドラゴンクエストヒーローズ』でした。入社してから、伝統あるシリーズばかりじゃなく他社とのコラボや新しい技術への挑戦にも積極的に取り組んでいる会社なのだ、と知りました。当時はゲームの知識もほとんどなくて、勉強不足だったと反省しています。

共同制作で生み出す大きな作品

今はCG部のキャラクターデザインチームで3Dモデルの制作をしています。入社してから現在もコラボレーションタイトルを担当しています。1つの3Dモデルが完成するまでには、CGスタッフだけじゃなく、企画、プログラマーなど多くの人が関わります。私の担当は2Dの設定をもとに3Dに起こしていく部分。

担当したキャラクターが画面上で動き出す瞬間はとてもうれしいですね。命が吹き込まれた感じで。自分の担当は全体の一部なのですが、ゲームが完成したときの達成感は格別です。発表会でタイトルが大画面にドンと出たときなど、この大作の一部分を私が作ったんだ、ととてもうれしくなりますね。

まだ届かない3Dの奥深さ

2Dの見せ方と3Dの見せ方は違います。設定は一枚絵だけじゃなく側面や背面の絵も描いてもらうのですが、絵をそのまま3Dに起こしても元絵の雰囲気が出ないことのほうが多い。そこを調整していくのですが、知識だけでなくセンスも必要でとても奥深いんです。悩んだときは先輩に相談します。

経験豊かで実力派の尊敬できる先輩がたくさんいるんですよ。1つのモデルが完成するまでに、たくさんの人が関わります。先輩が過去に作ったモデルをベースに制作することもあったりして、様々な人の技術によって作品が世に出ていくことを実感しますね。

自分に課している2つのこと

今、自分に課していることが2つあります。「ヒント探し」と「挑戦」です。自然の中にある質感や色彩は役立つことが多いんです。日常生活や遊びに行ったときも、モデル作りに応用できる「ヒント」はないか、という目を忘れないように努めています。 私はモデルの体の部分を制作することが多いので、筋肉や骨の構造など日々勉強しています。

それから「挑戦」。新しい仕事に着手するとき、かならず何か自分なりの「挑戦」を仕掛けるようにしています。あの時のヒントをこの部分で使えないかな?とか。チャレンジがないとただの作業になってしまいますから。美大生には、在学中に作品をたくさん作ってほしいですね。学生時代に自分の代表作を作っておけると、今後仕事をする上での立脚点――自信に繋つながるのではないでしょうか。