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YOICHI ERIKAWA
襟川 陽一

コーエーテクモホールディングス
代表取締役社長

好きなことを、仕事にすべき。その気持ちこそが、名作を生みだす。

今までにない面白さを実現する技術

「創造と貢献」は、当社の基本理念、コーエーテクモの精神です。
今までにない新しい面白さを創造し、ゲームファンの皆さまに楽しんで頂くことが当社の存在意義です。この新しい面白さを開発するために、常に最先端の技術を取り入れてきました。例えばシリーズ最新の15作目となる『信長の野望・大志』では、戦国時代の武将が持つ夢や野望を「志」としてAIにより実現し、個性的な武将達が縦横無尽に活躍するゲームに仕上げています。

このAIは信長のプロジェクトチームだけではなく、技術支援部という基礎技術を研究開発する部署も一致協力して開発しています。技術支援部の開設はもう20年以上前になります。元はシミュレーション研究所といってシミュレーション技術の進化を目指していました。新しい技術を研究・吸収してゲームに生かすことは各プロジェクト共通の課題ですが、個別に取り組むと非常に無駄が大きい。だったら一つの部署が専門的に研究開発をして、その成果を各プロジェクトと共有していく、そのほうが効率的だというところからスタートしています。またその逆に、各プロジェクトが開発した新規の技術を全社的なノウハウとしてシェアすることも行っています。

今、力を入れているAI以外にもVRや様々なコンピューターグラフィックスの表現技術に積極的に取り組み、自社でオリジナル開発している「ゲームエンジン」を常に更新しています。技術支援部の技術力の下支えがあって、コーエーテクモの挑戦と新しい面白さが生まれているのです。

新ジャンルは技術で切り開いてきた

1980年代からマルチプラットフォーム展開を始めて、1990年後半からはインターネット対戦ゲームやオンラインゲームの開発を先駆者として進め、成果を上げて来ました。3Dのキャラクターモデルが2体から3体、多くとも5体も出ればそれで充分だった2000年当時、PlayStation®2の登場をきっかけにして、新しい面白さを追求し、100体以上ものキャラクターを走らせたり、戦わせたりすることを当社が初めて行い『決戦』は“PlayStation Awards 2000”で特別賞を受賞しました。

▲『PlayStation Awards 2000 PlayStation 2 特別賞』

代表作は『真・三國無双』です。多人数をコントロールする「群れ制御」技術は当社が開拓したものです。
グローバルで大ヒットした『仁王』では、フォトリアルな表現技術に取り組みました。フォトリアル系の表現はアメリカが先進国で、これをキャッチアップするために技術支援部が非常に頑張って様々な新技術を取り込み、「ゲームエンジン」をバージョンアップしました。それがベースとなり、海外のお客様の高い評価につながったと思います。メタクリティックという世界的な評価サイトで88点という高得点をいただきました。

▲『仁王 Complete Edition』

AIについては、今後もさらに新しいAI技術を活用したゲームを開発していきます。社内だけではなく、外部のAIの専門の会社とも提携をして、開発を進めているゲームもあります。

ゲームクリエイターが経営の指揮を執る

おそらくゲームソフト会社で、ゲームのクリエイターが経営者になっている会社は少ないんじゃないかと思います。でもコーエーテクモは私がゲームクリエイターのシブサワ・コウとしてゲームを作ってきて、同時に経営も行ってきました。私は、最高に素晴らしいゲームを開発できればゲーム会社はより成長していくと信じています。つまり、ゲーム会社を経営することは、面白いゲームを作ってたくさんのお客様に楽しんでいただくことと全く同じ意味合いなのです。ですから、ゲームクリエイターや、クリエイターをまとめる立場のディレクター、プロデューサー、そしてゼネラルプロデューサーの経験者が経営の指揮を執るということは理にかなっていると考えています。

ゲームの開発コストは年々大きくなってきていて、以前は1億とか5億でしたが、10億20億、欧米のAAAタイトルに関しては100億円を超える規模になってきました。大きな予算を効果的・効率的に使っていかに新しくて面白いゲームを実現していくかという部分は、全く経営と同じで本質的な違いはありません。実際にコーエーテクモでは、経営陣の多くがプロデューサーとしてゲーム開発を手がけながら、それぞれ自分の担当部門を経営しています。

学術研究を支援

ご縁があって、最近は大学で講演や共同研究も行っています。慶應義塾大学や東京大学でAIやCGやオンラインゲームについて一緒に取り組んでいます。慶應義塾大学 大学部創設125周年記念商学部講演会は人が入りきれずドアを開放して参加者以外でも多くの学生が聴講していました。講演ではいろいろな質問が出て非常に活気がありましたね。学生の皆さんがとても喜んでくださって、また来年も行う予定です。

▲『慶應義塾大学 大学部創設125周年記念 商学部講演会』/『東京大学 工学部 講演会』
提供元:4Gamer.net

シミュレーションゲームをもっと世の中に役に立つ存在にしていきたいとの思いから、1994年に設立しました公益財団法人科学技術融合振興財団(FOST)で、当初から私は理事長を務めています。FOSTではシミュレーションゲームを活用して教育や研究の活動をされている大学教授や准教授の方々の研究助成をしています。大学院生や助手の方々についても補助金を提供しています。

▲『第11回 FOST賞受賞式』

成功を重ねていくためにチャレンジは続く

挑戦を続けていく中では成功も失敗もありますが、失敗を乗り越えて成功をどんどん積み重ねていくことが大切です。失敗を恐れて、何もチャレンジしなくなったら、そこで成長は終わってしまいますから。
『仁王』は途中で3回作り直して、開発を始めてから12年目に発売にたどり着いた長ーいプロジェクトでした。コーエーとテクモが経営統合して生まれたシナジー効果がなければ『仁王』は世に出なかったと思っています。いわば様々なチャレンジの上になり立っているのです。

チャレンジし、そしてお客様が喜んでくださる。それを生きがいとして、また会社の存在意義として定義して、これからも今までにない新しいゲームづくりにチャレンジしていきたいと思います。

コーエーテクモホールディングス
代表取締役社長

襟川 陽一

えりかわ・よういち/栃木県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、株式会社光栄を設立。元々染料卸売を営んでいたが、パソコン購入を期に、自力でソフトウェアの開発やゲーム開発を始める。本業の傍ら制作した『川中島の合戦』がヒットしたことで本格的にゲーム制作ビジネスを始動させ、名作「信長の野望」や「三國志」などのIPを生み出した。2009年4月にゲーム制作会社のテクモと経営統合し、コーエーテクモホールディングスを設立。全世界で200万本を突破したダーク戦国アクションRPG『仁王』では、ゼネラルプロデューサーを務めた。